2009/12/02

「予算の事業仕分けに物申す」

今日はある知り合いの推薦書を書いた。この人は僕より若いのだが某大学の立派な教授で、より良い大学への移籍を考えているらしい。僕自身、彼のことを高く評価しているので喜んで書いたのだが、それにしても僕が教授の推薦書を書くことになるとは...

ところでKEKの機構長が昨日ホームページの機構長コラムで「予算の事業仕分けに物申す」と言う記事を書いている。KEKの予算の大部分を占める「教育研究特別経費」が厳しい査定を受けたことに対する意見なのだが、以下の部分が特に重要である。

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私は、ウェブ中継で事業仕分け作業の議論を見聞していた。「特別教育研究経費」の議論は、事業仕分け委員から"これがどのような経費であるのか"という質問と、"すばる望遠鏡やスーパーカミオカンデのような研究経費です"との文科省の答弁のみである。この質疑応答で、事業仕分け委員の「特別教育研究経費」の査定は、"要求通り"が2人、"縮減"が6人、"廃止"が6人であった。これにはただ唖然とするのみである。議論と査定がまったく相関していない。なにを根拠にこのような査定に至ったのか理由を記すべきである。
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前にも書いたように、行政の改革のために「事業仕分け」のようなことをすること自体には反対しない。だが、問題はそのやり方だ。今回の「特別教育研究経費」に限らず、仕分け作業全体があまりにも乱暴なことだ。これまで関係者が努力して積み上げてきたことが多々あるにも関わらず、「無駄」の一言で切り捨てるやり方はファシズムと同じだ。国費を使った科学研究にこれまで無駄遣いがなかった、とは思わないし、改革すべきところはあるだろう。しかしそれらの吟味も民主的な議論も無いままに、ばっさりと切り捨てて何が残るのだろう。

報道によると、今回の事業仕分けについて経団連の御手洗会長は「行政の簡素化に結びつき、評価できる」「一つの斬新な手法だ」と褒め称えた、とのこと。財界は今回の「仕分け」を主導した財務省に強い影響力を持っている、と言われているだけに、誰のための改革だったかはこの言葉からも分かるだろう。国民向けの派手なパフォーマンスが目に付く鳩山政権だが、その裏にどんな考えがあるのか、しっかりと見つめる必要があるのではないだろうか?

1 件のコメント:

  1. 仰ることはよく分かります。私も理系の人間です。科学技術の研究には興味があり、日本のためにがんばってほしいと思います。もちろん、現場の先生方の努力も分かっております。
    しかし、
    残念ながら、長年、お役所食い物にされてきたことも事実です。無駄も多くなっていることも有ります。どうしても、国からの支援で運営していくと効率化が疎かになるのは仕方ありません。
    これを、是正して行くには、私の経験上 ”一端バッサリ切る”しかありません。
    貴殿の言われる通り、”民主的な議論”をして決定するのが筋ですが、そんなアマイ考えでは改革できないのです。今まで”アマイ汁”をたくさん吸ってきた官僚、お役人が簡単に諦めるとは思えません。残念ながらそれが、現実であり人間です。

    それから、”事業仕分け”の観点では、”一端バッサリ切る”ことになるのですが、事業としては必要であると言っています。もう一度、事業(特に組織)を練り直し、再スタートする。私もそれは賛成です。予算も国家戦略として重要ならば、もっと多くしても良いのではと思います。

    もう一つ
    政治は、”夢”ばかりでは困ります。国民全体の生活、短期的なこと、現実も考えなくてはなりません。
    正直そのことを、先生方分かっておられません。自分の研究などの予算のことばかり言っています。

    最初に書いたように、私も科学技術の発展のためにがんばってほしいのです。しかし、ここまで自分勝手なことばかり言っていると、正直腹が立ってきますよ。

    なんとか、科学技術など ”夢”に十分お金が掛けられる日本にしたいです。そのための ”事業仕分け”だと思いますが。

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